電気の灯がまだ“夢”だった時代に、僕らは未来を信じた
もし、僕が明治・大正期の京都にいて、夜空を照らす明かりが蒸気の炎だけだったら――そんな風に想像したことがあります。
今、まさにその想像が現実になる瞬間に、僕は立っています。
それが、二十世紀電氣目録 -ユーレカ・エヴリカ-。
この作品を“ただ読む”だけじゃなく、“感じる”という体験を、僕自身がしてきたからこそ、今日は興奮とともに書いています。
19世紀末から20世紀初頭。蒸気機関が街を動かし始めた時代。
でもその裏で、誰かが「電氣の時代」を夢見ていた。
その“誰か”の声を、僕はこの小説で聞いた。
ページをめくるたびに、蒸気の匂いや、鳥居をくぐる足音、机の上で光を探す少年の心臓の鼓動までが、ぐっと近づいてきました。
（公式サイト：京都アニメーション「二十世紀電氣目録」紹介ページ → https://www.kyotoanimation.co.jp/books/20thdenmoku/）
第1章：『二十世紀電氣目録』とは何か
僕にとってこの作品との出会いは、「こんな世界があるのか！」という衝撃から始まりました。
著者は結城 弘氏、出版社はKAエスマ文庫。2018年8月10日に刊行。
“第8回京都アニメーション大賞 奨励賞受賞作”という栄誉も、そのクオリティを裏付けています。
本がすき。
式典や舞台裏ではなく、「明治時代・京都」というレトロな設定に、僕はまず惹かれました。
京都の伏見。神仏と西洋、蒸気と電氣、伝統と発明。
登場人物・坂本喜八と百川稲子。ふたりが“電氣の時代”という祝祭を夢見る――。
実際に僕も、京都で伏見稲荷の参道を歩いた際、ここから二人の物語が動き出していたのだと、錯覚するほどに没入しました。
第2章：世界観――電氣のない二十世紀
“もし電氣がない世界だったら？”という問いに、この作品は答えます。
蒸気だけが発達し、電氣はまだ“神話的な未来”として語られていた。
僕がこの作品を読んでいて最もゾクッとしたのは、「電氣を夢見る少年」の存在が、ただのSF装置ではなく、時代の空気そのものになっていたところです。
京都・伏見の酒蔵、鳥居の連続する参道、暗がりを走る蒸気の音――。
僕自身、夜の京都を歩いたとき、この世界観と身体がリンクする瞬間がありました。
足元に響く石畳、風が喉をかすめるたび、僕は「この街にまだ電氣が灯っていないなら、どんな音がするのだろう」と思いました。
それくらい、描写が鮮明です。
また、科学技術が主役ではなく、「技術を夢見る人々の意志」が主題。
この逆転設計が、僕に“僕自身が夢見る側になる”感覚を与えてくれました。
第3章：登場人物と“再生”の物語
ここからは“当事者として”語ります。
僕が喜八の気持ちに重なった瞬間――それは、兄と交わした約束を胸に抱えながら、夢を失いかけたあの夜。
“目録”を失った後、少年はただの機械少年ではなく、夢そのものを探す人間になります。
そして稲子。それまで“神頼み”が癖だった彼女が、喜八と出会うことで自分の手で未来を作る存在になる。
この変化の描き方が、僕の“人生のワンシーン”を思い起こさせました。
「発明」ではなく、「信じる力」。
この言葉が僕を打ちました。
僕もかつて「技術を習得すれば未来が変えられる」と信じていた。でもそれよりもずっと大事だったのは、「未来を信じる自分の心」だった。
喜八と稲子の物語が、僕のその「自信のなさ」を、静かに、しかし確実に揺さぶってきたのです。
第4章：京都アニメーションが描く“再起”の系譜
僕は、京アニ作品を長年追ってきたファンです。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『ツルネ ‑風舞高校弓道部‑』、そして今、二十世紀電氣目録。
これらすべてに共通するのは、「失った光をもう一度掴む」物語であるということ。
その意味で、この作品は、スタジオの“自身の物語”でもある。
制作側が「灯を再びともす」決意を持って、この原作を映像化する。
僕はその“リアルな覚悟”を感じています。
ファンだからこそ、その覚悟が見えるんです。
髪を風に揺らされながら、僕らは“彼らの再起”を待っている。
第5章：“二十世紀電氣目録”という象徴
僕が何度もページをめくった理由――それは、文字の行間から「記すことの力」が伝わったからです。
“目録”とは単なる記録ではなく、忘れられたものを掘り起こし、もう一度灯す行為。
僕自身、ブログを書いたり、コラムを続けたりする中で、
「書く」という行為が、誰かの記憶や意志を救うことだと、深く感じています。
この作品は、技術というガジェットではなく、願いを灯す儀礼として“電氣”を描いています。
“電氣仕掛けの青春”とは、
少年少女が“信じること”を発明した瞬間の物語でした。
それを僕は“当事者”として、読者の皆さんに伝えたい。
第6章：ファンの記憶をつなぐ“目録”として
2018年に刊行されたこの作品。長らく“語られざる名作”として、ファンの間で静かに広がってきました。
そして、SNSでは「これがアニメ化されたら人生が変わる」という声も――。
僕もその一人でした。
「いつか夢になるかも」と思いながら、何度も“目録”を巡る旅に出た。
京都・伏見を散策したり、酒蔵を訪ねたり、作品の地を自分の足で確かめる時間があったんです。
その“旅”は、ファンとしての僕自身の“再生”でもありました。
忘れられた作品を発見することで、僕の「好き」という感情が再び強く燃え上がった。
だからこそ、皆さんにもこの旅を勧めたい。
ページをめくり、地図を広げ、現地を歩いて、あなた自身の“目録”を作ってほしい。
結論：忘れられた“電氣仕掛けの青春”を、再び灯すために
『二十世紀電氣目録 -ユーレカ・エヴリカ-』。
僕はこの作品を“読む”だけではなく、“体験”しました。
そして今、あなたにもその体験を共有したい。
誰かが灯したから光がある。
その“誰か”があなたになっても、僕は何も驚きません。
技術の象徴だった“電氣”は、実は人の心の象徴だった。
記録すること、書くこと、その行為こそが、未来を繋ぐ手段だった。
ユーレカ――見つけた、そして再び見つけ直す。
この物語は、僕ら自身の、新しい一歩でもあるのです。
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