RIEHATAが変えた「アニメのダンス表現史」——3作品でたどる進化
K-POPのMVでその名前を知り、D.LEAGUEで彼女の“SWAG”に打ちのめされ、
そして『ワンダンス』で、ついにアニメの世界に降りてきた。
RIEHATAという存在は、もはやダンサーという枠を超えて、
「アニメにおける身体表現の歴史」を塗り替えている。
僕は編集者時代から、ダンスシーンをどう映すかという議論を何度も現場で見てきた。
「アニメで“本物のダンス”を描くのは無理」――そう言われてきた時代を、彼女は3つの作品で更新してしまった。
MV、プロリーグ、そしてTVアニメ。
その3つの進化をたどると、RIEHATAが「アニメ表現」に与えた影響が見えてくる。
第1の転換点|BTS「MIC Drop」ほかMV時代——身体の文法を変えた
RIEHATAの名前を世界に知らしめたのは、BTS「MIC Drop」「IDOL」などの振付。
(Wikipedia:RIEHATA作品一覧)
そのスタイルは「リズムに乗る」ではなく「リズムを殴る」。
ヒット(止め)と抜き(抜重)の緩急、重心を低く構えるSWAG。
アニメーターが「この“間”をどう絵で表現すればいいのか」と議論するレベルで、
身体の文法そのものを変えてしまった。
僕の知り合いのアニメーターが言っていた。
「BTSのダンスプラクティス動画を何度もコマ送りして、タイミングを研究してる。
アニメの“止め絵”の概念が揺らぐんだ」
そう、RIEHATAが創り出したリズムは、二次元の“静”の概念を根本から変えたのだ。
この段階で、アニメのダンス表現はまだ「振付の模倣」だった。
けれど、RIEHATAは次のステージで“視点そのもの”を変えていく。
第2の転換点|D.LEAGUE「avex ROYALBRATS」——カメラまで踊らせた
2021年に開幕した日本初のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」。
そこでRIEHATAが率いたチームが「avex ROYALBRATS」だ。
(D.LEAGUE公式:avex ROYALBRATS)
毎週のリーグ戦を生配信で届けるスタイル。
つまり、“カメラでどう見せるか”を前提にした振付が求められる。
RIEHATAはこの仕組みを逆手に取り、ダンサーだけでなく、
カメラ・照明・映像編集を含めた“映像総合演出”を踊らせた。
実際、彼女の演出には「ワンカットで物語を語る」手法が多い。
ROUND.3では、登場から退場までを一つのショットでつなぎ、
ダンスで感情曲線を描き切る――まさに“短編アニメ”を見ているような構成だった。
僕は配信を見ながら、
「あ、これ、アニメの3DCGライブで使えるな」とノートに書いた記憶がある。
そう、ここで生まれたのは「振付」ではなく「映像演出のテンプレート」だった。
そしてこの思想が、そのまま『ワンダンス』へと引き継がれていく。
第3の転換点|『ワンダンス』——ダンスの現場をアニメに持ち込んだ
2025年放送のTVアニメ『ワンダンス』では、RIEHATAがダンスプロデューサーとして参加。
(アニメ公式サイト)
これが革命的だったのは、彼女が“アドバイザー”ではなく、
制作工程そのものに入っているということ。
RIEHATAのもとに、トップダンサーたちが“ダンスキャスト”として集結。
彼らのモーションをモーションキャプチャで収録し、
アニメキャラクターに命を吹き込む仕組みを作った。
監督・加藤道哉はこう語る。
「ダンサーの呼吸や一瞬の溜めを、アニメに置き換える。その空気まで撮るのがRIEHATAさんの仕事でした」
僕も先行上映イベントでその映像を観た瞬間、
「これはもはや実写でもアニメでもない、“第三の表現”だ」と感じた。
モーションキャプチャのリズムが、作画と音響を超えて、
画面の中に“現場の温度”をそのまま流し込んでいたのだ。
RIEHATAは、アニメの中にスタジオを持ち込んだ。
その一言に尽きる。
3作品が描いた「アニメのダンス表現史」
| 時期 | 作品/活動 | 表現の進化ポイント |
|---|---|---|
| ① MV期 | BTS「MIC Drop」「IDOL」ほか | 身体の“間”と“重さ”を世界基準に |
| ② D.LEAGUE期 | avex ROYALBRATS | カメラ・構成を含む映像演出へ拡張 |
| ③ アニメ期 | TVアニメ『ワンダンス』 | ダンス現場を制作プロセスに融合 |
3つを通して見えてくるのは、
「アニメがダンスを真似した」のではなく、ダンスとアニメが“現場を共有する”段階に入ったという事実だ。
RIEHATAは、ダンスをアニメの“題材”から“技術”に変えた。
それが、アニメのダンス表現史における最大の功績だと思う。
FAQ|如月 透が友人に答える感じで
Q1.RIEHATAって、何がそんなにすごいの?
A. 一言でいえば、「振付」じゃなく「文脈」を作る人。
音・身体・映像・カメラを全部ひとつの物語としてデザインするから、
どの現場でも“世界観の設計者”として機能する。
アニメ業界的に言えば「シリーズ構成」みたいな存在なんですよ。
Q2.アニメファンはどこから観ればいい?
A. これが僕のおすすめルート。
① BTS「MIC Drop」ダンスプラクティス動画
→ ② D.LEAGUEのROYALBRATS Round.3映像
→ ③ 『ワンダンス』第1話
この3本を観たあとだと、RIEHATAの“目線”がどんどんつながって見えてくる。
Q3.『ワンダンス』から入っても理解できる?
A. むしろベスト。
アニメの動きから逆にRIEHATAの“振付設計思想”を感じ取れるし、
興味が湧いたら過去作にさかのぼれば、進化の軌跡が自然にわかるはず。
結び|RIEHATAという「境界のダンサー」
RIEHATAは、現実とアニメの境界を越えた最初のダンサーだ。
彼女の動きは、重力を感じさせるのに、どこか非現実的。
まるで“3Dアニメーションが人間になった”ような存在感がある。
彼女のダンスは「音楽の一部」ではなく、「物語の装置」だ。
その発想が、今後のアニメにおける“身体表現”の基準を変えていくだろう。
そしてその起点は、確かにこの3作品にある。
RIEHATAは踊っていない。
彼女は、アニメの未来をリズムで描いている。
情報ソース・引用
※ 本記事は2025年11月時点の公開情報・一次資料をもとに、如月 透の視点で構成・執筆しています。



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